「菜根譚」とは?逆境も平穏も受け入れ心を整えながら生きる知恵

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『菜根譚(さいこんたん)』は、中国・明の時代の思想家・洪自誠(こうじせい, 1573–1620)が著した処世訓の書です。

日本では織田信長が活躍し、徳川家康が江戸幕府を開いた頃、同じ時代に生きた人物でもあります。

現代の便利さは、人に「自らの力で生きている」という錯覚を与えます。

その錯覚は、いざ困難に直面したとき、心の耐性を弱めてしまうのです。

ほとんどの人は今まで過ごしてきた中で、無力さを感じた経験が大小少なからずあるのではないでしょうか?

『菜根譚』は、「菜根を嚙みしめる苦みに、人生の真の味わいがある」と諭します。

技術がどれほど進歩しようとも、人は結局、自分自身の内に立ち返り、心の深みに向き合うことを求められているのです。

『菜根譚』は、儒教・道教・仏教の三つの思想が融合しており、逆境に耐える力・平穏を楽しむ心・人間関係を整える知恵が凝縮されています。

目次

なぜ今「菜根譚」なのか

現代は、SNSや仕事の重圧によって「心がすり減る」時代です。

嫉妬や妬み、自分の無力さ――それらは、期待と現実の間に生じる影ともいえます。

職場や友人関係だけでなく、家族や親族といった身近なつながりの中にも生まれ、私たちを悩ませます。

そんな時、『菜根譚』は静かに語りかけてきます。

  • 苦境をどう受け止めるか
  • 欲望や衝動をどう制御するか
  • 心をどう静めるか

といった問いに答えてくれる、普遍的な人生の教科書です。

菜根譚の科学的な裏付け

菜根譚の最初の一句にこのような言葉が出てきます。

道徳を守る者は、一時の寂しさを味わう。
権力に媚びる者は、末永い虚しさに苛まれる。

賢者は、目先のことに囚われず、遠い未来や死後を思う。
ゆえに、一時の寂寞を受け入れ、長き虚無を避けるべきである。

一言でいうと、「一時の孤独を恐れれば、永遠の孤独を抱く」と、なります。

さらに解釈を深めれば、これは「報酬の先送り」を説いているとも言えます。

1960年代後半から1970年代前半、スタンフォード大学で行われた有名な「マシュマロ実験」では、子どもに「今すぐ1つ食べるか、少し我慢して2つもらうか」を選ばせ、待つことのできた子どもほど、その後の学業・行動・健康で良好な成果を示すことが追跡研究で明らかになりました。

つまり、歴史を通じて人が繰り返し実感してきた知恵は、現代科学の実験によっても裏づけられているのです。

菜根譚と古典との響き合い

菜根譚の教えは、他の古典思想とも共鳴します。

  • 紀元前5世紀:孔子『論語』(義 vs 利)
  • 1~2世紀:エピクテトス(内面の自由)
  • 4世紀:アウグスティヌス(神の愛に従う自由)
  • 13世紀:トマス・アクィナス(理性と信仰に基づく倫理)
  • 18世紀:カント(原則・義務の哲学)
  • 1989年:コヴィー『7つの習慣』(原則中心の生き方)

菜根譚の教えもまた、この長大な系譜の探究の一環であり、静かながらも力強く時代を越えて響き続けているのです。

時代も文化も異なるのに、同じ真理が繰り返し語られているのは、それが人間にとって本質的なテーマだからです。

古今東西、私たち人は同じ悩みを感じていたのです。

まとめ

「菜根譚」とは、逆境をも受け入れ、平穏を楽しみ、心を整えながら生きるための知恵です。

古典でありながら、現代科学や哲学とも共鳴し、今を生きる私たちに深いヒントを与えてくれます。

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