菜根譚前集2:経験だけに頼らず自然体と素朴さを持ち続ける方がよい

水墨画.人.画像

「経験だけに頼らず、自然体と素朴さを持ち続ける方がよい」を現代語の価値観に置きかえると、

経験やスキルが重要である一方で、それだけでは本当に人としての魅力や価値が発揮されない。

と、いうメッセージと捉えられます。

「イソップ物語」「グリム童話」など、世界の児童文学を日本に紹介した鈴木三重吉。

彼は、大人向けの文学から子どもの心を見つめ直す方向へと舵を切りました

夏目漱石の門下生として作品も書いていましたが、人間の欲望を反映する自然主義的(※1注)な文学に息苦しさを感じていました。

清らかな感性や希望を表現できる道を模索するようになります。

今回は、科学的なエビデンスと古典の視点からも、前集2を紐解いていきます。

目次

菜根譚前集2:鈴木三重吉の生き方にも通ずる

鈴木三重吉.画像

「経験だけに頼らず、自然体と素朴さを持ち続ける方がよい」という言葉は、過去の成功にとらわれ、新しい視点を大切にすることも読み取れます。

この言葉から、鈴木三重吉の人生が思い浮かびます。

子どもたちに美しい文学を届けた童話の先駆者」という名に相応しい、人生を送りました。

鈴木三重吉は、夏目漱石の門下で文学活動をスタートさせましたが、漱石の小説と同じ方向性に固執せず、自らの道を模索。

というのも、当時の子供むけ文学は低俗、遊び心を欠くようなものが多くありました。

・明治末から大正期にかけて子供むけの文学は急増しましたが、販売部数を増やすための娯楽中心の雑誌が多く流通。

・教育現場では「修身書」「唱歌」など愛国心や道徳教育を育む、子供がもっている純粋な遊び心を軽視する教育が重視。

特に彼が児童文学の分野に進んだことは、当時の文学界では異例の挑戦でした。

赤い鳥.画像
広島市立中央図書館

そして、鈴木三重吉は1918(大正 7)年 7 月 1 日に「赤い鳥」を創刊。

商業主義に走ることなく、純粋な文学作品として質の高い童話を提供しました。

「赤い鳥」には芥川龍之介「蜘蛛の糸」、宮沢賢治「注文の多い料理店」、北原白秋などの作品が掲載。

教訓:経験や固定観念にとらわれず、自然体と素朴さを持って新たな挑戦を続けたものでした。その姿勢は児童文学に多大な貢献をし、現代でも柔軟に前進する重要性を教えています。

鈴木三重吉から、多くのことを学べますね。

菜根譚前集2:経験は未来を語れるわけではない

デビット・ヒューム.画像

1711年にスコットランドのエディンバラで生まれた、デイヴィッド・ヒュームは、経験から未来が予測できるわけではないと語っています。

つまり、「今までそうだったから、これからもそうだろう」と考えることに異議を唱えました。

例えば、

  • 毎日太陽が昇っている、だから明日も昇るだろう。
  • コインを10回投げて全部表だったから、次も表だろう。
  • 紙に火をつければまた燃えるはずだ

と、経験的に思い込んでしまいます。

「帰納(※1)の問題」の確信とされ、未来は保証できないという事になります。

現在では、未来が保証できないことはわかっていますが、18世紀前半のヨーロッパでは理解できなかったそうです。

キリスト教神学や形而上学(※2)といった、神の命令や理性の法則として、絶対的に存在すると考えられていました。

ヒュームは、理性を神から授かった真理の通路という見方でした。

例えば、困っている人を助けるのは理性で考えているわけではないでしょう。

打算的に考えている場合もありそうですがww。

夕日.画像

「神がそう命じたから」や「理性が必ずそうせよと命じるから」ではありませんよね。

共感(気の毒に思う気持ち)や優しさ から行動しているのではないでしょうか。

当初、ヒュームの「人間本性論」は時代を取り巻く状況、難解すぎる内容から、ほとんど受け入れられませんでした。

自身も「死産(stillborn)として世に出た」と語っていたことから、推測できますよね。

それでも、哲学者のカントは「ヒュームの懐疑が私を目覚めさせた」と告白。

いつの時代も、革新的な発想はジワジワ効いてくるのかもしれませんね。

※1:帰納:たくさんの経験や観察から、一般的な法則や結論を導くこと。※2:神や宇宙の究極的な仕組みを理性で説明する学問(当時)

菜根譚前集2:認知バイアスで起きる判断ミス

認知バイアス.画像

経験だけにとらわれると、判断ミスをおかしてしまう研究を紹介します。

2022年にFrontiers in Psychologyで掲載(PMC8763848)されている研究では、認知バイアス(偏り先入観)で起きる判断ミスが紹介されています。

この研究は、「医療・法務・金融・経営」などの専門職における項目で紹介されていますが、一般生活でも当てはまります。

「Aさんは有名大学出身だから仕事もできるに違いない」

と、肩書によって先入観をもって見てしまいませんか?

特に、「医療・法務・金融・経営」の専門家は自身の訓練や経験により「自分は他人より優れている」といった感覚が強くなるそうです。

人間は、思い出しやすい経験を重視して判断していまいます。

脳と電球.画像

脳はエネルギー消費が膨大なので、節約のためと言われています。

専門家になるまでは、相当な訓練や経験を積んでいますから思考の固定化は一般の人よりも強いと考えられます。

もちろん、人間は簡単に一括りにはできなく、個人差があり全員が同じバイアスに弱いとは考えるのは誤りです。

私たちもそれぞれ、性格がありドジな人もいれば、正確無比な人もいます。

それでも、正確無比な人も本当に完璧というわけではありませんよね。

人間はミスをすると考えると、日々接している人にも優しくできそうですね。

菜根譚前集2:素直さが未来を切り開く

心の秤.画像

鈴木三重吉やデイヴィッド・ヒュームは、自分の素直な気持ちから未来を切り開いています。

しかし、「そんな理想論が!」とお思いの方が大半でしょう。

管理者も重々承知ですが、少しだけ認知バイアスに抵抗し素直な気持ちの大切さを知りたくなですか?

毎日の「気づきノート」をメモる

気づきノート.画像

人は行動や思考を急に変えることはできません。

管理者も多くの人の一人です。

人は少しずつしか成長していかないようで、続けていくことが重要。

そのためには、地道な習慣を味方につけることが最善の方法とされています。

しかし、習慣を身に着けるには、

  • 学習(知識系) → 1〜2か月
  • 運動(身体系) → 2〜3か月
  • 思考・哲学(認知系) → 半年〜1年

と、根気のいる作業です。

2020年に「解剖学教育における振り返りの文章化の効果」(PMID: 31965753)の研究では、自分自身を深く理解するに至りました。

学生は学期ごとに10回でしたが、日常生活なら「1日1行」でも十分に効果が期待できます。

というよりも、日々忙しいアナタには面倒な作業をさらに増やすことは苦痛でしょう。

環境も整えてください、手順はコチラです。

  • ペンとノートを目に入る場所に置く(環境)
  • 寝る前に書く(時間)
  • 1行だけ書く(作業)
  • 毎日書く(習慣)

これだけです。

寝る前は、ネガティブな考えになってしまう説もありますが、寝る前が一番時間が取れるはずです。

大切なのは、習慣にすることです。

人は目の前にペンと紙があると、何かが書きたくなる生き物です。

自分の意志の力に頼らないでください、環境に頼ってください。

何かが変わるはずです。

水のように、しなやかに生きる

老子.画像

自然体、素直さの大御所といえば紀元前6世紀頃の思想家の、老子が一番に上がるでしょう。

かなり昔の人なので、諸説あり居なかったのではないかという説もありますが、その思想は確実に現代にも響くものがあります。

老子の思想ですが菜根譚の骨格をなし、各章でそのエッセンスが散りばめられています。

一番有名なのが、著作とされる「道徳経」第8章の

上善は水の如し。水は万物を利して争わず、衆人の悪む所に居る。故に道に近し

上善は水の如しという有名な言葉ですね。

さらにわかりやすくすると、

  • 本当に優れた生き方は、水のようなものだ。
  • 水はすべてを生かしながら、自分を主張せず争わない。
  • 人が嫌がる低いところにも静かにとどまる。
  • そのあり方が、宇宙の自然な道(タオ)に最も近いのだ。

と、なるわけですが管理者も道(タオ)については、正直よくわかりません。

現代でも小説やアニメ、漫画の作品のなかに道(タオ)使われますが自由に解釈していますね。

道.画像

老子は水の思想があるように、無為自然を根本に置き作為的なことを避けています。

現代社会に生きていると、作為的なことだらけで辟易しますが、水って至る所に溢れていますが、意識ってしませんよね。

  • 朝のコップ一杯の水:眠りから目覚めた体に沁みわたり、静かにエネルギーを与える。
  • シャワーや入浴:疲れや余分なものを洗い流し、心身をリセットしてくれる。
  • カフェで飲むお茶やコーヒー:その一杯の背後には、世界中をめぐった水の旅があると気づける。
  • 料理で使う水:米をとぐ、野菜を洗う、スープをつくる。水は縁の下で支えている。
  • 川や海を眺めるとき:流れたり寄せては返す姿に、時間や人生の流れを重ねて感じる。
  • 災害や断水のニュースに触れるとき:普段は当たり前の水が、どれほど大切でありがたいかを思い出す

生きていく上で、必ず必要ですが普段は主張はしません。

しかし、災害など大きな力も変化することがあります。

老子の上善は水の如しという、しなやかで堅牢な心の在り方を生活の中に取り入れてみませんか?

菜根譚前集2:原文

「経験だけに頼らず自然体と素朴さを持ち続ける方がよい」の原文がコチラ。

渉世浅、点染亦浅、歴事深、機械亦深。
故君子与其練達、不若朴魯。
与其曲謹、不若疎狂。

原文は下記のように訳すことができます。

渉世浅 点染亦浅(原文)
世の中を知る経験が浅い人は、世俗的な価値観や思考に染まる度合いも浅い。

歴事深 機械亦深(原文)
逆に、多くの経験を積んだ人は、世俗的な打算や策略に染まりやすい。

故君子与其練達 不若朴魯(原文)
だからこそ、君子(立派な人物)は、世の中を巧みに渡り歩く洗練さを追い求めるよりも、素朴で飾らない姿勢を大切にするべきである。

与其曲謹 不若疎狂(原文)
また、過剰に慎重で細心になるよりも、少し大らかで自由な態度の方が良い。

教訓「経験」や「慎重さ」などの一見良さそうなものが、逆に人間らしさを失わせることがあると警鐘を鳴らしています。経験や知識が増えても、素朴さや大らかさを忘れないこと。

菜根譚前集2:現代語訳

「経験だけに頼らず、自然体と素朴さを持ち続ける方がよい」は捉え方も様々で、

・経験に縛られず、柔軟な心を保つことが大切です。
・複雑に考えすぎず、シンプルな考え方を忘れない方がよいです。
・過去の成功にとらわれず、新しい視点を大切にするべきです。
・無理をせず、自然な自分のあり方を大切にしましょう。
・表面的な技巧よりも、心の純粋さを優先するのが望ましいです。

と、考えることもできでしょう。

まとめ

過去の経験や打算に頼りすぎず、飾らない自然な自分で接することで、信頼と共感が深まり、より良い人間関係が築ける。

相手を計算や駆け引きで判断するのではなく、素直で誠実な態度を持つことで、お互いに安心感を与え、対等で心地よい関係を作る大切さを教えてくれます。

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